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2025.07.27 コーヒーの読み物

【コーヒーの品種】ベルナルディーナ (Bernardina)

【コーヒーの品種】ベルナルディーナ (Bernardina)

ベルナルディーナの夜明け—COEウォッチャーが見た、エルサルバドル新時代の胎動

私は2007年に、エルサルバドルで開催されたCup of Excellence(COE)の国内審査員、そして国際審査員の両方を務めました。

あれから18年、COEの舞台には数多くの素晴らしい農園や品種が登場し、その進化をリアルタイムで見てこられたことは、コーヒーに携わる者として大きな喜びです。

COEは単なる品評会に留まらず、「生産者の技術力と哲学が国際市場に認められる場」であり続けてきました。毎年の結果を見るたびに、生産者たちがいかに情熱を持ってコーヒーづくりに取り組んでいるかが伝わってきますし、その年の流行りや今後の傾向を読み取ることができ、私たちロースターにとって勉強の場でもあります。

そんな中、近年目覚ましい活躍を見せているのがエルサルバドルの「ベルナルディーナ(Bernardina)」という品種です。登場からわずか数年で、COEの舞台においても存在感を放つようになり、いまやエルサルバドルを代表するスペシャルティ品種のひとつと言っても過言ではありません。

以下では、2019年以降のCOEにおけるベルナルディーナの入賞実績をもとに、その傾向や注目すべき点を振り返ってみたいと思います。

ベルナルディーナとは

エルサルバドルのユニコーン品種ベルナルディーナ(Bernardina)は、西側の名産地サンタ・アナ県、セロ・ベルデ火山近くの農園で発見されたコーヒー品種だと言われています。

2013年頃、農園管理者ベルナルディーノ氏が、他の品種(ブルボンやパカマラなど)とは明らかに異なる風味を持つ木に気づいたのがきっかけでした。

遺伝子解析の結果、この品種は既存のブルボンやパカマラなどとは異なり、エチオピアのアガロ種やゲイシャと遺伝的に近い関係にあると判明。品種名は発見者への敬意を込めて「ベルナルディーナ」と命名されました。(発見の詳しい経緯は、動画でどうぞ)

【動画 ベルナルディーナがどうやって発見されたか】

カッププロファイル

ベルナルディーナは、ナチュラル、ハニー、アナエロビック(嫌気性発酵)などで処理されるのが主流です。
フレーバーは、精製方法によっても変化しますが、メロン、白桃、マンゴーのような甘い香り、グレープフルーツ、レモンなど爽やかな柑橘の酸、紅茶やジャスミンのような華やでフローラルな香りが感じられ、多層的で複雑な構成が高い評価を得ています。

ベルナルディーナ 入賞一覧

| 年   | 順位  | 農園  | ポイント | 精製方法 |
| 2019年 | 3位 | La Esperanza | 89.93  | Honey |$39.5
| 2020年 | NW | La Esperanza | 86.13  | Honey |
| 2021年 | 10位 | La Esperanza | 88.64  | Honey |
| 2021年 | 13位 | Santa Juana | 88.40 | Natural |
| 2022年 | 7位 | La Esperanza | 89.48 | N.A. |
| 2022年 | 11位 | Santa Juana | 88.57 | Natural |
| 2025年 | 4位 | La Esperanza | 89.55 | Honey |
| 2025年 | 9位 | Los Bellotos |  87.64 | Natural |

89点の衝撃から始まった、新しいエルサルバドルの物語

最初にこの品種が脚光を浴びたのは2019年、La Esperanza農園が出品したベルナルディーナが見事3位(スコア89.93)に入賞し、1ポンドあたり39.5ドルという高額で落札されたことがきっかけでした。精製方法はHoney。この年のロットは、ゲイシャにも似たその独特なフレーバーと精製方法とのバランスの良さで多くの国際審査員を魅了しました。

以降、La Esperanza農園はベルナルディーナで継続的に入賞を重ねており、2020年は、国際入賞を逃しましたが、National Winner。2021年には再びで10位、2022年7位、そして今年2025年には4位に返り咲いており、まさにベルナルディーナの顔とも言える存在です。精製方法もHoneyやAnaerobicなどを使い分け、品種の個性を最大限に引き出す努力が伺えます。

注目すべきは、こうした成果が一農園にとどまらず、他の生産者にも広がっている点です。有名なのは、Santa Juana(サンタ・フアナ農園)です。2021年にNatural精製で88点台を記録し、2022年には再びNaturalで11位に入賞。さらに今年2025年にはLos Bellotos農園が登場し、9位に食い込んでいます。ベルナルディーナが特定農園の専売特許ではなく、エルサルバドル全体で広がりを見せていることの証です。

初期には主にHoney精製が中心だったのに対し、近年ではNaturalやNatural Anaerobicなどの精製手法が増え、風味表現の幅も広がってきています。これは、生産者たちがこの品種の特性を深く理解し、それを最大限に引き出すために様々なアプローチを試みている証拠です。個人的には、フリーウォッシュトで精製されたロットをカップしてみたいし、FWでの入賞が成し遂げられるのを夢見ています。

ベルナルディーナは、ゲイシャに次ぐ新たな旗手としての地位を着実に築いていると感じます。長年エルサルバドルのCOEを見守ってきた者としても、この品種の登場と広がりは非常に心強く、また誇らしく思える現象です。

今後、この品種が世界中のコーヒーファンにどのような感動を届けていくのか非常に楽しみです。

ベルナルディーナの旅路は、まだ始まったばかりなのです。

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