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2025.08.16 コーヒーの読み物

エル・インヘルト農園のマラゴジペ —— 店主自ら現地で摘み取った 想いの詰まった一杯

エル・インヘルト農園のマラゴジペ —— 店主自ら現地で摘み取った 想いの詰まった一杯

2025年2月、私はグアテマラのエル・インヘルト農園を訪れました。

前回ここに来たのはコロナ禍前。今回は少しゆっくりさせてもらおうと敷地内にあるゲストハウスに2泊させてもらうことに。
到着したその日は、農園主ドン・アルトゥーロと久しぶりの再会を喜び、コーヒー談義に花を咲かせていました。

そして翌朝、私が朝食を食べ終わると、スタッフが赤いかごを私に差し出し、こう言ったのです。

「今日の収穫、君も行くよ。マラゴジペ、摘んできて。」

気づけば私は、ピッカーたちの荷台に混じってトラックに揺られていた。
車が止まり、目の前に現れたのは、南西区画「タンザニア202」。
赤く熟したマラゴジペが、朝日を浴びて静かに輝いている。

“幻の象豆”と呼ばれるこの希少種を、まさか自分の手で摘むことになるなんて——
コーヒー人生の中でも、忘れられない一日が始まろうとしていました。

ところが…。

「それ、まだ完熟してない!」
「これは摘んじゃダメ!」

——次々に飛んでくるダメ出し。

マラゴジペは一粒一粒が大きく、そのぶん熟度の見極めがとても繊細なのです。
ちょっとでも早摘みすれば、味わいに大きく影響が出てしまう。
結局、摘み取った半分は、ダメ出しされてはじかれてしまった。
しかし、この厳しい基準こそエル・インヘルトの品質を裏付けていると思えば納得である。

強い日差しと乾いた風に舞い上がるホコリ、そして袖から出ている肌を刺してくる小さな虫たちと格闘しながら摘み取った満足感。

「たった一杯の美味しいコーヒーの裏に、こんな重労働がある」

この体験は、コーヒー屋としての私の根っこを、もう一度深く掘り直すような貴重な時間になりました。

 

マラゴジペとは——やさしさと気高さを併せ持つ希少な品種

マラゴジペは、ブラジルのマラゴジペ市で偶然発見されたティピカの突然変異種。
その大きさから「象豆(エレファント・ビーンズ)」とも呼ばれています。

生産性が低く、病害虫に弱く、適合する土地もそんなに多くないことから栽培がら市場にはほとんど出回りません。

現在のブラジルでは、ほとんど栽培されておらず、中米の一部にほんの少し残っているのみ。けれどトップクラスのマラゴジペは、別格の味わいです。

果実の甘い香り、滑らかな口あたり、スパイスやカカオのニュアンスを感じるスパイシーなアフター。
時間をかけて静かに味わいたくなる、そんな“奥ゆかしい名品”です。

このマラゴジペが育つのは、エル・インヘルト農園の南西部、タンザニア202という小さな区画。

40年前、アルトゥーロ氏の父の友人が持ち込んだ種を試験的に植えたのが始まりでした。
当時はまだマラゴジペの性質がよく分かっておらず収量が低ければ困るからと、少しだけ植えられたそうです。

偶然にもこの区画がマラゴジペにとって理想的な環境だったようで、今では非常に優れた風味のロットが毎年生まれています。

 

たった一度だけ出品されたCOEでまさかの快挙

このマラゴジペは、2011年に一度だけカップ・オブ・エクセレンス(COE)に出品され、なんと堂々の3位入賞という快挙を成し遂げました。

じつはその授賞式に、私・かやぬま自身が偶然出席していました。
結果発表で「エル・インヘルト」がアナウンスされた瞬間、客席がざわめき、私は思わず立ち上がるほど驚き、嬉しくなったのを覚えています。

しかし、それ以上に驚いていたのは農園主アルトゥーロ本人。
彼は「マラゴジペでこんな評価を受けるなんて、正直、まったく予想していなかった」と本気で目を丸くしていたのです。
その姿を見て、「これは本当にすごいことが起きたんだ」と、胸が熱くなりました。

このとき私はすぐさまアルトゥーロに声をかけ、
「このマラゴジペ、来年カフェテナンゴで扱わせてほしい」と、半ば興奮気味に伝えました。

しかし、時代の流れはゲイシャに移ろうとしていた時期であり、その後マラゴジペは、そこまでの注目を集めることなく、農園の“とっておき”として静かに守られ、一般市場にはほとんど出回ることがありませんでした。

日本でこのコーヒーの味を知っている人は、今でもほんのわずかです。

 

カップの中の “現地体験” をあなたにも

飲んでいただければ、きっと感じていただけると思います。
このコーヒーには、ほかでは感じられない個性があり、しっかりと心に残る奥ゆかしさがあります。

ひとくち含むと、まずふわりと広がるのは、熟したプラムのような果実味。
そこに続いて、ビターチョコレートやココアを思わせる、やわらかく温かみのある甘さが重なっていきます。
後味には、ほのかにシナモンやクローブのようなスパイス感も漂い、静かに長く余韻が続く。

そんな“物語のある味わい”です。

この独特のフレーバーは、マラゴジペという品種が持つポテンシャルに加え、インヘルト農園という特別な環境、そして長年大粒品種のフレーバーを研究してきた私たちの焙煎による調和によって生まれたものです。

現地の陽射しと風、フィールドの土と汗、赤く熟れたマラゴジペの果実を一粒ずつ摘み取ったときの、あのやわらかな感触と漂っていた香り。それらの記憶のすべてが、焙煎というプロセスを通じて、この一杯の中に静かに溶け込んでいます。

このコーヒーを飲むということは、ただ味わうだけではなく、農園の片隅で過ごしたあの時間を一緒に体験することでもあるのです。

 

マラゴジペが創る特別な時間を

ぜひ、この機会に手に取ってみてください。
あなたの大切な時間を静かに輝かせてくれる一杯になるはずです。

 

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