コーヒー豆通販のカフェテナンゴ

2025.10.09 生産者特集

シャングリラ農園 ― 歴史と原点の一杯

シャングリラ農園 ― 歴史と原点の一杯

輝き続ける『始まりの大地』 エルサルバドル

2007年、私はエルサルバドルへと旅立ちました。目的は、Consejo Salvadoreño del Café(※) が開設したばかりの Escuela de Café(コーヒー学校)で学ぶため。当時、消費国からの受講希望者は前例がなく、現地の人々はたいそう驚いたといいます。しかし、この国特有の温かく開かれた心が、異国から来た私をやさしく包み、日本人として初めての生徒として受け入れてくれました。

 

平日は机に向かい理論を学び、週末は農園を巡り歩く――そんな慌ただしくも充実した日々の中で、私は次第にこの国の大地と文化、そしてコーヒーが持つ奥深さに心を奪われていきました。

 

ホームステイ先は、学校の恩師であるエルネスト・ベラスケス氏の家。家族で食卓を囲み、焙煎したばかりのコーヒーの香りに包まれながら、言葉を超えた温もりを感じる暮らしがそこにはありました。そして学びの集大成として挑んだのが、カップ・オブ・エクセレンス(COE)の審査員という大きな試練です。当時Consejoのトップであったリカルド・エスピティア氏との二度の面接を経て、私は外国人として初めて正式に国内審査員の一員となることを許されました。通常、外国人は、国際審査から加わるのが当然です。つまり外国人が国内審査員になるというのは、前例のないことでした。

 

審査の場で出会った数々のコーヒーは、この国の風土と人々の努力の結晶であり、その一杯ごとに物語が宿っていました。審査が終わった後は、スタッフや農園主たちと夜遅くまで語り合い、未来を夢見る彼らのまなざしに触れるたび、私の心は大きく、激しく震えました。

 

こうしてエルサルバドルは、私にとって単なる「学びの場所」ではなく、人生を転換させる原点となったのです。

 

ファン・カルロスとの出会い

教室で同じ机を並べたクラスメイトのひとりに、ファン・カルロス・グレッグがいました。

彼は、シャングリラをはじめ、サンホセやエル・レクエルドなど、数々の農園を受け継ぎ、守り、そして未来へと育てている3代目の生産者です。その姿勢は、単なる経営者のものではなく「知識を超えてコーヒーの真理を探そう」とする深い探究心が滲み出ていました。

 

彼の手から生まれるブルボン種のフリーウォッシュトは、洗練された技術に裏打ちされながらも、どこか祖先から受け継がれた伝統の重みを帯びていました。一口含むだけで、時代を超えて紡がれてきた物語が胸に響くそのコーヒーを目の前にして、心の奥底から「いつか必ずこのコーヒーを日本で紹介したい」と強く願っている自分に気づきました。

 

週末になると、彼は私を迷うことなく自分の農園へと連れて行ってくれました。シャングリラ、そしてエル・レクエルド。そこではただ農園を歩くだけでなく、実際に木に手を添え、剪定の方法を実演してくれることもありました。「ここを切るのは、次の収穫のためなんだ」と静かに語りながらハサミを入れるその姿に、私は技術だけでなく、自然と共生する知恵を学びました。農園の空気の中で交わされたその学びは、教科書では実感できなかった、生きた知識そのものでした。

 

つながり続けるパートナーシップ

そして時を経た今も、私たちの交流は続いています。彼は何度も日本を訪れ、カフェテナンゴに来店してくれました。そのたびに懐かしく温かい時間が流れ、コーヒーを通じて培った絆が国境を越えて息づいていることを実感します。私もまたエルサルバドルを訪れ、彼の農園を歩きながら語り合う――そんな往来が重なり、友情はより確かなものとなっていきました。

 

ファン・カルロスは、偉大な生産者であり、伝統と革新を併せ持つ希有な存在であり、そして何より私にとってかけがえのない友人です。教室での小さな出会いは、今もなお続く深い友情へと育ち、カフェテナンゴという場所にも息づいているのです。

 

シャングリラ農園 受賞歴

2007年 COE15位
2009年 COE 15位
2009年 SCAA Coffee of the year 9位
2015年 COE 27位

 

※エルサルバドルの「Consejo Salvadoreño del Café(CSC)」は、コーヒー産業の発展を目的とした政府機関。コーヒーの品質向上や輸出促進、国内外での消費拡大を支援しており、生産者への技術指導や市場情報の提供も行います。また、Cup of excellenceをACEと共同開催したり、展示会に出展するなど「エルサルバドルコーヒー」のブランドを世界に発信し、国際的な評価向上を図っています。

 


  >>>エルサルバドル「シャングリラ農園」を購入する

記事一覧に戻る

ページトップへ