コーヒー豆通販のカフェテナンゴ

2025.10.19 生産者特集

ククルチョ農園 ― 大粒の夢と友情がめざす最高峰

ククルチョ農園 ― 大粒の夢と友情がめざす最高峰

IHCAFEの門をたたく

まだカフェテナンゴを立ち上げる前の話になります。

私はホンジュラスのコーヒー研究機関『IHCAFE』(イカフェ)で学びたいと願い、勇気を出してメールを送りました。しかし、返事はなく、時だけが過ぎていきました。半ば忘れかけていた半年後、ようやく届いたのは「よかったら勉強しにこないか?」という一通の返信。ホンジュラスらしい、のんびりとした時間感覚に思わず微笑んだのを覚えています。

 

IHCAFEで私を待っていたのは、若き職員ロニー・ガメスでした。彼の案内で広大なホンジュラスの産地を共に巡りながら、私は専門機関ならではの知識をたっぷりと吸収しました。サンプルロースト、生豆グレーディング、そして精製所での最新機械の仕組み──すべてが新鮮で、学びの連続でした。さらに、カッピングテーブルを囲み、同じカップを前に意見を交わす時間は、単なる技術習得以上の意味を持っていました。その日々を通じて、私はホンジュラスの奥深いコーヒー文化に触れると同時に、ロニーというかけがえのない友を得ました。

 

激動の時代とロニーの挑戦

当時のホンジュラスは、長らく『低品質コーヒーの産地』と見なされていました。しかし、COE(カップ・オブ・エクセレンス)の開催によって、ホンジュラス産のスペシャルティコーヒーが次々と世界の舞台に躍り出ると、その認識は大きく書き換えられていきます。やがて世界中のバイヤーたちが個性的な風味を求めてホンジュラスを訪れるようになり、コーヒー生産エリアは、かつてない注目を集めることになりました。

 

その激動の渦中にいたロニーは、これを好機とみるや大胆な決断をします。

安定したIHCAFEの職を離れ、自らの信念を携えて独立の道を歩み出したのです。その背景には、自分の成功だけではなく、小規模生産者の努力と品質を正しく評価し、彼らが正当な報酬を受け取れるようにしたいという強い想いがありました。

 

こうして彼が立ち上げたのが「Cafe Raga」です。ロニーは各地の山間を歩き、小さな農家に眠る可能性を信じてマイクロロットを発掘し、その品質を世界に示しました。勇気あるその一歩は、多くの生産者に希望を与え、やがて彼自身がククルチョ農園を営むに至る原動力となったのです。

 

理想を実現する舞台としてのククルチョ

標高1650m、急峻な山頂に広がるわずか5ヘクタールの土地──そこに「ククルチョ農園」はあります。農園名の「ククルチョ」とは現地で「頂上」を意味し、その名の通り険しい山道を越えなければ辿り着けません。道のりはあまりに険しく、現地の人々はロバを使って収穫物や資材を運び入れます。人と動物が力を合わせて営まれる農園は、ホンジュラスのコーヒーづくりの厳しさと力強さを象徴しています。

 

この厳しい環境の中で、ロニー・ガメスは自らの理想を形にしています。彼はホンジュラスのスペシャルティコーヒーを牽引する存在として、ここに農園とウエットミル(精製施設)を設け、フリーウォッシュトはもちろん、アナエロビコやナチュラルなど多様な精製方法を駆使し、華やかで個性的なロットを生産しています。

 

農園はまた、研究と未来への投資の場でもあります。ゲイシャやパカマラなど、多彩な品種が栽培され、シードバンクとしても機能しています。こうした取り組みには、コーヒー業界の未来を想うロニーの思想が見て取れます。

 

さらに、ククルチョは地域社会にも深く根ざしています。周辺農家と協力しながら運営を行い、高い給与水準を維持することで地域の雇用と生活環境に貢献しています。厳しい自然環境のただ中にありながら、持続可能で誇り高い農園づくりを続けているのです。

 

大粒の宝石 ― パカマラ

カフェテナンゴに届くククルチョ農園のパカマラ種は、ひときわ特別な存在です。

 

手にすると驚くほど大粒で、真っ赤に熟した果実は、ロニーの知識と経験の結晶。アフリカンベッドで20日以上じっくりと干すことでカップにはピーチのような果実感とチョコレートを思わせる甘美な香りがあらわれます。清らかな透明感を湛えた味わいは、いまだに色褪せることのない20年にわたる友情をも映し出しているかのようです。

 

この一杯を楽しむ時、あなたもまた、激動の時代を越え、情熱と信頼で結ばれた友情の物語を味わうことになるでしょう。

 


>>>ホンジュラス「ククルチョ農園」購入ページ

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