2026.01.11 コーヒーの読み物
ユーカースが見た100年前のアメリカのコーヒー
桜新町 1st/Quarterの吉増さんが翻訳した『All About Coffee』を2冊ほどいただいてパラパラと呼んでいたらなかなか面白くて、学生の頃読むのをあきらめてしまったこの本ですが、吉増版ならもう少し読めるかもしれないと思いました。
100年前のアメリカでユーカースが見ていたコーヒーとはどんなものだったのか?面白かったので簡単に紹介します。
コーヒーは「飲む食べ物」(food beverage)
「コーヒーは嗜好品か?」と聞かれたら、多くの人はその通りだと答えるでしょう。ところが約100年前、アメリカのコーヒーを体系化した大著『All About Coffee』(1922)の編者 William H. Ukers は、違う角度からアメリカの一杯を考察しています。彼の視点は、コーヒーを味や香りではなく“生活の必需品”として捉え直させてくれます。
Ukersは、アメリカにおいてコーヒーが「朝食に欠かせないもの」として19世紀初頭に確固たる地位を築いたと書きます。しかも、その地位は永久に揺るがないように思われると。強い言い切りです。なぜそこまで言えるのか。背景には国の歴史そのものが横たわっています。
1773年のボストン茶会事件によって紅茶は敵の飲み物、コーヒーは愛国の飲み物という意識が広がり、コーヒーの消費量が増えてゆくきっかけになりました。さらに1920年に施行された禁酒法により“飲むこと”をめぐる社会の大転換が起こり、コーヒーの地位が確立したとUkersはそう見ていたのです。
そしてUkersはアメリカの朝のコーヒーを「food beverage」、つまり“飲む食べ物”として語ります。大きなマグにミルク、クリーム、砂糖を入れて飲む。コーヒーそのものは精神と肉体を刺激し、そこに加わる砂糖は身体のエネルギーになる。朝の一杯は、香りの贅沢であると同時に、1日を走り切るための燃料でもある。コーヒーが“生活の装置”として定着していく理由が言語化されています。
さらに面白かったのは、砂糖の量。Ukersは当時の推計として、アメリカで消費される砂糖の相当量が「コーヒーカップの中に消えている」とまで書きます。(数字は100年前の概算ですが、年間消費量の10分の1がコーヒーの甘み付けに使用されていたといっています)
コーヒーが“単体の飲み物”ではなく、砂糖や乳製品を入れて初めて完成する飲み物であるという視点に立っています。。
Ukersが見ていたコーヒーは「香りの嗜好品」というより、力いっぱい働くための“燃料”でした。ミルクやクリーム、砂糖まで含めて初めて完成する飲み物。だからこそ、砂糖の消費量という数字まで持ち出して「それがアメリカの朝なんだ」と言い切る。そう思ってカップを持つと、ブラックで楽しむことを基本としたスペシャルティコーヒーは、まだ新しい作法なのだと再認識します。



















