2026.01.26 産地特集
“浅煎りだけじゃない” ケニアの懐の深さを知る ~ ケニア「ギチャタイニ AA」
スペシャルティコーヒーの中でもトップクラスの人気を誇るのがケニアのコーヒー。
ただ、カフェテナンゴ店主として長年感じていることがあります。
世の中のスペシャルティコーヒー店は、ケニアを浅煎りに寄せすぎている
もちろん浅煎りのケニアには、明るい果実味や華やかな香りと透明感があり、それはそれで魅力です。カフェテナンゴでも浅煎りを販売しています。
しかしケニアは本来もっと懐が深い豆です。中煎り(2ハゼを入れた)にしたときに現れる「香り」「深み」や「濃厚な果実感」は、浅煎りの世界とは別の景色を見せてくれます。
だからこそ今回のケニア「ギチャタイニAA」は、R:1(浅煎り)とR:3(中煎り)の2種を用意しました。
同じ豆でも焙煎で表情が変わる。ケニアの“幅”をぜひ体験してもらいたいと思っています。
ギチャタイニ AAの味わい
ギチャタイニは「クリーンさ」と「立体感」が際立つロットです。
一口目にカシスを思わせる黒い果実のニュアンス。続いて柑橘の明るい酸、エキゾチックで紅茶のようなフレーバー。後半にかけて黒糖や蜂蜜のような甘さが盛り上がり、冷めるほどに余韻が伸びていきます。ケニアのスペシャルティとして満足感のある1杯を楽しめます。
カフェテナンゴが用意する「2つの焙煎」
浅煎り:透明感と華やかさを最大化
浅煎りでは香りの立ち上がりが華やか、果実味の輪郭がシャープに出ます。
カシスや柑橘、フローラルなニュアンスが上品に整い、ケニアの“洗練された上質さ”を楽しめる焙煎です。
中煎り:果実感が“濃厚”になり、深みが増す
中煎りにすると果実味が消えるのではなく、むしろ厚みのある果実感として立ち上がってきます。
甘さの感覚が増し、味の芯が太くなり、余韻に深さが出る。浅煎りでは味わえない“別のフレーバー”が現れます。
ケニアが「浅煎り専用」だと思っている方ほど驚きがあるはずです。
やっぱりケニアは「ニエリが最強」だと思っている
ケニアにはエンブ(Embu)やキリニャガ(Kirinyaga)など、有名な生産エリアがいくつもあります。
そのうえで、カフェテナンゴ店主として率直に言うなら——
ニエリ(Nyeri)は最強だ!
理由は単純でケニアらしさ”の完成度が違うからです。
果実感の強度、鮮明さ、洗練された印象、フローラルさ、トマトソース、焼きのり、ワイルドなローステッドビーフの風味、ケニアらしさ満載。そしてそれらがまとまった全体のバランス。どれをとっても、他の産地の豆では代替が効かないようなきらめくロットが見つかるのがニエリ地区です。
今回のギチャタイニもまさにそのタイプ。
ケニアを数多く飲んできた方ほど「ニエリの強さ」を再確認できる一杯だと思います。
ギチャタイニとは?— 生産者が運営するウェットミル
Gichathaini Wet Mill(ギチャタイニ)は、Karatinaの町から約6km、マウント・ケニヤ国立公園東部に位置します。
Gikanda農協が所有する3つのウェットミルのうちの1つで、チェリーを持ち込む生産者自身が管理・運営しています。所属メンバーは約1,045名。
周辺は年間を通して雨量が十分で、平均15〜26℃。夜間の適度な冷え込みと火山性の赤土。コーヒー栽培にとって理想的な環境が揃っています。
綺麗な水が透明感を作る
収穫されたチェリーは同日中にウェットミルへ搬入。
完全完熟・未完熟・過熟・異物を分類し、完全完熟のみを果肉除去します。
発酵・水洗には近くを流れるRagati川の清浄な水を使用。さらに使用水は再循環させ、ネピアグラスや樹木を植えることで自然に戻す過程まで含めた環境配慮がなされています。このようにしてサスティナビリティと液体の透明感を両立させています。
詳細情報
* 地域:ケニア Nyeri County
* ウェットミル:Gichathaini Wet Mill(Gikanda農協)
* 標高:約1,600〜1,900m
* 品種:SL28 / SL34 / Ruiru 11 / Batian
* 土壌:火山性の赤土
* 年間降水量:1,200〜1,600mm
* グレード:AA
日本におけるケニアコーヒーの重要性
最後にケニアが日本で重要な理由をカフェテナンゴなりに整理しておきます。
1)“クリーン”と“個性”を両立し、味覚の基準を上げる
日本のマーケットはクリーンカップへの要求が高い一方で、印象に残る個性も求められます。
ケニアはこの両立ができる、稀有な産地です。結果として、飲み手の味覚の基準を一段引き上げる力があります。
2)焙煎・抽出技術を鍛える「基準点」になる
ケニアは焙煎でも抽出でも、差がはっきり出ます。
だからこそ、店にとっては技術の基準点になり、他の産地の表現力にも波及します。
3)「浅煎りだけ」の固定観念を壊せる
そして、ここが今回もっとも伝えたいポイントです。
ケニアは浅煎りだけの豆ではない。中煎り〜深煎りでも、深みや濃厚な果実感という別の魅力が成立する。
日本の飲み手の選択肢を広げ、スペシャルティの楽しみ方を立体化してくれる存在だと思います。



















