コーヒー豆通販のカフェテナンゴ

2025.10.29 生産者特集

シュマバ・デ・ルルデス農園 ― 夢を分かち合う二つの道

シュマバ・デ・ルルデス農園 ― 夢を分かち合う二つの道

フランシスコ・メナとの出会い

カフェテナンゴを創業する前、中米のコーヒー産地を巡る旅をしていた私は、コスタリカでフランシスコ・メナと出会いました。

 

その頃の彼は、首都近郊のエクスポーターで働く一介のカッパーにすぎませんでしたが、私は「仕事のできる男だな」
と感じたことを覚えています。けれど最初のうち、彼との距離は遠く、挨拶と言葉を交わしても、磁石の極のようにすれ違う感じがありました。

 

ある日のこと『農園に行こう』ということになり、私たちはピックアップの荷台に揺られながら、山麓の農園と小さなマイクロミルに行きました。

新しく植えられたゲイシャの苗、アフリカンベッドに敷き詰められたハニープロセスのパーチメント──現場で同じものを見て、同じ驚きを共有したとき、言葉の壁を越えて空気がやわらいだのを覚えています。

 

今となってはメナとの出会いは、私にとってかけがえのない宝物のような出来事となっていますが、当時はこんなに長い付き合いになることなど想像もしていませんでした。

 

 

コスタリカンドリーム ── 成長の軌跡

やがてメナは独立し、コーヒーエクスポーター Exclusive Coffees を立ち上げます。瞬く間にコスタリカを代表する輸出業者へと成長していくのですが、彼の歩みは、運に委ねられたものではなく、情熱と知恵によって刻み込まれた確かな軌跡でした。

 

背景には、2000年代初頭の「コーヒー危機」があります。コーヒー相場の暴落によって収益悪化に直面した生産者たちは、チェリーをそのまま売り渡すのではなく、自ら精製し、乾燥させ、最終製品まで全て自分たちでやることによって買いたたかれることを防ぐ方向に舵を切ります。小規模でも品質を高め、ロットごとの個性で勝負する時代に突入しました──いわゆるマイクロミル革命です。

 

クリーミーな質感と蜂蜜のような甘みを引き出すハニープロセスの隆盛、ロットのトレーサビリティ強化、新しい品種の作付けなどコーヒー生産に大きな変革が広がるなかで、メナは生産者の努力結晶を世界の消費者へ届ける役割を選びます。これはマイクロミル革命の意義や効果を消費者にきちんと理解してもらうための大切なポジションでした。

 

エクスクルーシブコーヒーは、倉庫兼品質評価のラボを整え、カッピング・品質管理基準を整え、生産・精製のノウハウを惜しみなく伝えるワークショップを開きました。生産者と知識を分かち合い、皆で技術を磨き、品質を高めていく。その輪に賛同者が次々と集まり、高品質のマイクロロットは世界のバイヤーと結びつき、コーヒーファンの元へ運ばれていく。こうして同社は時代の寵児となり、コスタリカの新しいコーヒー像を世界に刻みつけていきます。

 

栄冠へと続いた道

メナのもう一つの夢として始めたのが「Finca Sumava de Lourdes」。その名は、彼が愛するチェコの国立公園
「シューマヴァ」にちなんでいます。自然と人との共生を象徴するその土地は、彼の人生哲学を映し出しています。

 

この農園は、アラフエラ県ウエストバレー、標高1680–1785mの高地に広がります。中央山脈を境に、東のカリブ海側の湿潤な気候と、西の太平洋側の乾いた気候、ふたつの気候帯の影響を同時に受ける土地。そこには複雑で豊かなミクロクリマが生まれ、果実の熟成速度や酸味の質に多彩な表情を与えています。

 

コーヒーエクスポーターとしてどの土地がより良いコーヒーを生み出すのかを熟知した彼らしい場所選び。結果として開園後、数多くの優秀なロットを輩出し、2016年には念願のCOE 1位を獲得、生産者としても脚光を浴びることとなります。

 

 

共に駆け抜けたパートナーシップ

出会って約20年、フランシスコ・メナとカフェテナンゴは、スペシャルティコーヒー業界を共に走り続けてきました。メナが Exclusive Coffees を通じて数多くのマイクロロットを輸出したおかげで、私たちは日本の消費者に多彩なコスタリカコーヒーを紹介することができました。

 

その成果のひとつが、2019年にカフェテナンゴが販売した「コスタリカ10種飲み比べセット」です。しかし、時代が早すぎたのか、結果は──わずか3セットしか売れませんでしたが、それでもコスタリカコーヒーの多様性とメナのネットワークがあったからこそ実現できた企画でした。

 

このエピソードに象徴されるように、私たちの関係は単なる取引ではなく、コスタリカのコーヒー文化を共に日本へ届ける挑戦の歴史です。友情と信頼が重なり合いながら育まれたこのパートナーシップは、これからも未来へ続いていきます。

 

カフェテナンゴに届いた友情の一杯

数々の栄誉を手にしてきた SUMAVA ですが、しかし私にとってこの農園の本当の価値は、その栄誉を超えたところにあります。
長い年月をかけて育まれた友情の延長線上に、この一杯があるということ。

カフェテナンゴに届いた SUMAVA のコーヒーは、ピーチやシトラスを思わせるフルーティーな酸、ハニーライクな甘み、そして清らかな透明感をたたえています。

 

このコーヒーを口にするとき、あなたもまた、コスタリカの大地とメナの情熱、そして長きにわたる友情の物語を味わうことになるでしょう。

 

 


>>>コスタリカ「シュマバ・デ・ルルデス」購入ページ

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